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日常に死が見え隠れ花吹雪
高野訪問介護ステーションのご利用者Mさんの俳句紹介シリーズ第22回目です。今回はお見事、京都新聞俳壇の入選作品として掲載されました。おめでとうございます!
日常に 死が見え隠れ 花吹雪
一読して思わずちょっとはっとさせられました。人にとって避けがたく、その謎を誰も解きえていない「死」の気配が「日常」という穏やかな日々の営みの中で、ふと現れては消えてゆく様が目に浮かんできます。しかし、その直後に、目に映るのは「花吹雪」という、あまりにも華やかで、そして切ないほどに儚い情景です。「死」という影が「見え隠れ」するからこそ、満開の桜が散りゆく「あわれ」が、いっそう胸に迫ります。花の命が最も輝き、生を謳歌する一方で、静かに、しかし確かに死の兆しが同居しているかのような、深遠な無常の美しさに心打たれます。
歳を重ね続けていくにつれ、日常の生活の中で予告もなく家族・友人・知人との別れの知らせが突然舞い込んできます。そして、青空の下で輝くように咲き誇る桜を見上げながら「来年もこの桜を見られるかな」という言葉がふと心の内に浮かんできます。けれど、それは決して悲観的な思いだけではなく、限りある命だからこそ、今この瞬間を慈しまなければという気持ちも生まれてきます。Mさんの俳句は、そのような生きることへの静かな「励まし」を、そっと私たちに語りかけてくれます。
最後に、この句を読み終えすぐに胸の内に去来したのはあの西行の短歌です。
願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ
Mさん、今回も豊かな感性にあふれた奥行き深い俳句をありがとうございました。
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