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知ることが生きる力に蜘蛛の糸

2023/08/08 スマイルBlog

 今や京都新聞文芸欄俳壇の常連さんになられた高野事務所のご利用者Mさんの今回の作品は、哲学的と言いますか、今までの作風と少し違っていますね。

       知ることが生きる力に蜘蛛の糸

 人は、母親のお腹の中で命を授かり、この世に生まれてから、新しい世界を次々と知る日々を過ごします。徐々に言葉を覚えて自我に目覚めると、何でも知りたい欲求にかられて様々な知識と知恵を獲得していきます。その知的好奇心は際限がありません。そして、その一つひとつが生きる力に繋がっていきます。そうやって子どもは、大人への道を歩んでいくのですが、私たち大人は概して知る(学ぶ)ことへの欲求が衰えがちです。今、人生100年時代を迎えて、仕事を定年で終えた後も新しい職業に就くために「リスキリング(学び直し)」というものが推奨され、残りの長い人生を楽しむために「生涯学習」の必要性が叫ばれています。そのように新しい世界を知る(学ぶ)ことは、老いてなお自分自身の視野を広め、生きる楽しみを増やすことになるでしょう。

 さて、下五の季語「蜘蛛の糸」をどう感じ取りましょうか?蜘蛛の紡ぐ糸は一見するとか細く弱々しいですが、織りなす幾何学模様のネットは生き抜いていくための獲物を上手く捕らえられるようになっています。しかし、人間の手によって邪魔者扱いされ断ち切られることも多く、それでも蜘蛛は、決してめげずに何回も何回もしたたかに作り直していきます。

 また、「蜘蛛の糸」と聞いて、やはり芥川龍之介の同名短編小説を外すことは出来ません。その作品の教訓はここでは論じませんが、文章そのものの美しさは群を抜いています。「翡翠のような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御おろしなさいました。」人は、音楽でもそうですが、美しい文章に出会うと心が洗われるように豊かになり生きていく力を得ます。「蜘蛛の糸」が結びにあることから、そんなことを想像いたしました。

 Mさんは、「蜘蛛の糸」にどんなお気持ちをこめられたのでしょうかね。また、お話しお聞かせください。今回もありがとうございました。

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