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連れ添いしふたりの行方花筏

2022/06/06 スマイルBlog

 今回も京都新聞の京都文芸欄に掲載された高野事務所のMさんの俳句をご紹介させていただきます。今回の作品「連れ添いしふたりの行方花筏」を読み終えたとき、まずイメージとして浮かび上がってきたのは、Mさんのお住まいがある左京区の名所「*哲学の道」の桜並木と道に沿って流れている白川疎水の風景です。

 ふたりは若い男女の旅人なのでしょうか、憧れの京都を訪れて桜散る哲学の道を散策しています。他愛ない会話をしながら、ふたりは「幸せ」という時間を過ごしています。ふと疎水の方に目をやると川面にはひらひらと散った花びらが一面に連なって流れていて、その白く儚い美しさに目を奪われてしまいます。その時、足を止めたふたりはどんな言葉を交わすのでしょうか。流れゆく花びらの行方は、ふたりの恋の行方と重なりながら、どこに向かうのでしょうかね。

 実は、この後にMさんの担当相談員の方から、この「花筏」は植物の「ハナイカダ」であることを教えてもらいました。(↓の写真を参照) 図鑑によれば、ハナイカダは葉の中央に花を咲かせ、実をつける植物で葉を筏(いかだ)に見立て、その上に乗る花や実を筏の上に乗る人に見立てたという説明がありました。そうであれば、この俳句から受けるイメージ少し違ってきます。

 ハナイカダの花が、長い間連れ添って来られたご夫婦に擬人化され、人生という川の流れに乗って旅をしています。その流れはどこに向かっているのか。来し方を振り返れば、遥か遠くにふるさとが思い起こされ、ここまで二人でよく旅をしてきたものだと、深い感慨が込み上げてきます。これからも幸せと憂い、喜びと悲しみを重ねながら地図のない人生を旅されていくのでしょう。

 前回までの作品はこちらからご覧になれます。↓

https://www.kyoto-fukushi.org/office/news/8544/

*銀閣寺から若王子神社へと続くこの散歩道は、哲学者である西田幾太郎がこの道を歩いて思索を巡らせていたことにちなんで、そう名付けられています。